2月日記

昔から誕生日を祝うことがあまり好きではない。自分の存在がまた少し死へ近づいたな、と母が作った誕生日ケーキを前にして心の中でよく思っていた。年齢が上がれば年を重ねていくことへの抵抗感や意味事態が薄れていくだろうなと思っていた。でも、同時に矛盾しているみたいだけど人の誕生日を祝うことがとても好き。私の大好きな人たちが生まれてきた日をこうして祝い続けられるということがただただ嬉しくて、存在してくれていてありがとうという気持ちでいっぱいになる。鬱陶しく思っている人もいるかもしれないけど私はなるべく大好きな人たちには愛を示し続けたいので誕生日はその機会の一つとして捉えている。

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私とパートナーは誕生日が一日違いで私が一日早い。パートナーに出会ってからいつも疎かにしていた誕生日という日が二人に合同誕生日という形で新たなイベントとなったのはとても新鮮だったし今まで自分の誕生日に対して持っていた嫌悪感みたいなものを少し払拭してくれる良い機会になった。何より相手の誕生日を祝うので精一杯なのでそれに釣られて私もじゃあついでに、みたいな流れになるのが楽で一緒に祝えることが嬉しい。出会ってから4年が経とうとしているけど時間なんてものは適当で主観的。私たちは自分たちのペースでここまで歩き続けてきた。これから先もずっとなんてことは考えたこともなかったけど、世界が目まぐるしく変わり続ける中で一緒に変わりながらもまだお互いをそれぞれの人生の中に組み込めて来られたことはとても幸運なことなのかもしれないと思っている。

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今月は仕事が忙しくて読みたいものが読めなかったりということも多かった。新しいスキルアップの研修が1月末にあってからそれの社内テストとレビュー期間を経てやっと来週から元々のスキルと新しく学んだもの二カ所で仕事を任せてもらえることになった。3月からは本格的にプログラミングやテクニカルの分野での独学を開始するつもりなのでさらに忙しくなりそう。それでもやっぱり本と映画は費やせるだけどの時間を費やしたいし知りたい、読みたい、観たいものがたくさんあるのでもっとうまく時間を使えるようになりたい。

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2月、あまりたくさんの本は読めなかったけど心がしーんと静まる(私の大好きなタイプ)映画にたくさん出会えたのが嬉しかったな。あとは良い音にもたくさん出会えた、良い月だった。

あとは昨年末に始めた編み物に加えて裁縫にも手を出し始めてしまった。とりあえずミシンに慣れるのが目的で2週連続でポーチらしきものを作ってみた。3月は簡単なトップスに挑戦したいと思っている。

読んだ本

今月読み終えたのは一冊だけ。
『The End of Loneliness』Benedict Wells
原作はドイツ語なので英訳されたものを読みました。ある家族の事件がきっかけできょうだい三人がバラバラになってしまった主人公が時間を経て家族や人とのつながりを築き直していくというストーリー。学生時代から大人へなるまでの過程を抜けてその先を描き続けた時間のスパンにも圧倒されたけど一番印象に残っているのは家族や愛する人との繋がりを築いた後も拭えない孤独、というものがそこにあり続けていてそれに蓋をするのではなく主人公の向き合い方の変化を捉えていたのがとても良かった。

あとは500ページ越えのフィクション
『The Most Fun We Ever Had』Claire Lombardo
これは二月頭に読み始めてつい一昨日までかかった。ある夫婦とその4人の娘たちのこれも世代を超えた物語。夫婦が出会うところから娘たちが生まれてそして彼女たちが自分たちの人生を歩んでいく過程。その中で娘たちが自分たちの両親に抱く複雑な思いや自分たちの人生やパートナーシップのあり方を投影していく物語の編み方が上手い。ただ設定や背景があまりにも白人サーバビアすぎて全体的に物足りなさが残った。

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聞いた音

2月のプレイリスト。
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何百回も聞いた音は三人のアーティストのコラボLong Way Up by Courage, Bellah, kadiata。
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観たもの

2月は良い映画に溢れた月でどこから始めれば良いのかという感じですが。

2/6『ドライブ・マイ・カー』濱口龍介
どんなに近いと思っていた人でもどうしても見えないところは必ずあってそれが見えてしまった時に自分だったらどうするのか。それを相手に聞く前に答えがなくなってしまった時の悲しみや途方に暮れた気持ちとどう向き合っていけば良いのか。どこにも辿り着かないようで静かに登場人物たちが自分たちの物語に覚悟を持っていく過程を描いている、とても複雑だけどリアルな作品だなという印象。

2/7 『French Dispatch』Wes Anderson
ウェス・アンダーソンの映画はいつも芸術面での雰囲気や繊細さみたいなものに圧倒されているけど今回もその色がとても濃く、楽しい作品だった。雑誌のコラムを一つ一つ読んでいる構成はとてもThe New Yorker的な雰囲気があってhigh artが好きなオーディエンス向きだな。

2/15 『あの子は貴族』岨手由貴子
これを観ていて思い出したのが東京生まれの母が昔に話していた本当に東京で育ったお金持ちの人、という意味がとてもリアルにわかったし東京に出てくる人たちの人生のシビアさや地方各地の格差が心を掴んで離さない。ほとんど地方で育って東京で暮らしたことのある人にしかわからない辛さみたいあのがある。

2/21『湯を沸かすほどの熱い愛』中野量太
母親という役割に焦点が当てられているという印象もあったけど話が進むにつれて血縁関係を超えた場所にある愛や相手を思いやる気持ちの存在へと移行していったのがとても良かったしもっとこのような親密な繋がりの形が描かれるべきだなと強く思ったしラストが最高だった。

2/26『CODA』Sian Heder
昔にフランス版の『La Famille Bélier』を観ていてそれのリメイクだということを知らなかったので無性にどこかで観たことあるような?というのが終始頭から離れなかった。家族の中で唯一聞こえるということの責任と罪悪感と孤独が音楽や周りの人たちとの関わりから引き出されていて、聞こえる聞こえないといいのが問題なのではなくやはりそれを受け入れる受け入れないという判断をしている社会に問題がある。

2/27C’mon C’mon』Mike Mills
こんなにじわじわくるのは久しぶりで観ている間も終わった後も、何度もシーンを頭の中で再生していた。甥の面倒を見ることになった主人公が子供と過ごしながら悩んだり心臓が縮む思いをしたりなかなか思い通りにいかない日々を体験して姉が一人の母親として、女性として、どんな風に世界を見てきたのかというのが子供を通して共有されるというのが新鮮な描き方だなと思った。白黒で切り取られた街の雰囲気と主人公の仕事関係で行われる子供たちへのインタビューへのシーンがとてもリアルで音が自分の耳の直接入ってくるような不思議な作品だった。

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2月は忙しかったけど心に残る映画や本と出会えたのが一番嬉しかったな。あとは新しいことを始めるドキドキとわからなさが新鮮でやっぱりこの学んで試行錯誤している過程も楽しいなと改めて思い直しました。