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ふたつの音

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季節の音が静かに忍び寄ってくる。

そこには微かなささやきと、地面の底から這い上がってくるような低い深い心臓の音みたいな力強さと両方を備えていて、朝に吹く風によってどちらかが大きく聞こえる。

 

空が燃えていた。

雲からちゃんとでてくることのできなかった太陽が、その怒りをぶつけるように輝くから、空は本当に燃えているみたいで一瞬怖くなった。

 

そう、心臓の音みたいに身体中に響き渡る朝だった。

 

そうして少しずつ少しずつ季節というのは大きな変化と小さな変化を行き来しながらあっち側へと、完全に移行する。

 

その間の揺らぎが何よりも好き。

空白に生まれる新しい音。思い出と未来とこの瞬間が一気に駆け巡る。

毒された血液は髪の毛の先から足の指の爪の先端までに届ける、その揺らぎを。

 

揺らぎにつかまれた自分には逃げるあてもなく、ただその揺らぎの間を歩くしかないのだ。もたげてくる痛みとか悲しみとか怒りとか悩みとか迷いとか、全部。

 

逃げたくなる。

それでも毎朝聞こえてくる大小の足音からは逃げることはできない。

起き続けて、その音をひたすらに聞き続けるしかないのだ。

 

 

mugiho