本当に言いたいことは別れる時に浮かんでくる

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もしかしたらわたしは、一見書きたいことばかり書いてきたように見えて、本当に言いたいこととか、書きたいことを書いてこなかったのかもしれない。

 

自分で言うのもだけど、結構我慢強い方だと思う。 引っ越しも転校も信じられないくらいに繰り返しながらなんだかんだ、新しい生活に慣れようと、自分なりに工夫をして、色々と言えない思いとか惨めさとかに耐えてなんとかやってきたって言う小さな自負がある。

 

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帰ってくる場所について

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帰ってくる場所がないままにこうして21年を過ごしてきて、

自分の後ろに残ったものとは。

 

毎年のように住む場所が変わり、学校が変わり、生活が変わるのが当たり前な人生を生きてきた。気づけば微妙な期間しかいなかったその場所に自分の居場所はなくて、「帰る」というほどの親密さもなければそこへの縛りもない。

 

ある意味では自由なのかもしれないが、自分は常に、

どこか心が帰れる物理的な場所を求めていた。

 

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不確かな世界へ 3

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LOST SOUL

 

3.

その目なのか石なのかわからない物体を拾い上着のポケットに突っ込んだ。ひんやりと冷たい。ビー玉みたいな滑らかさ。思っていたよりも小さくて指の間にすっぽり収まるその小さな正体不明の(私は目だと思っている、どこからかくる確信。不可能な確信。)ものをもてあそびながら再び歩き出す。

 

喧騒の中での一瞬のこの出来事はこれからの何かの啓示のような気がしてならない、と思い始めるのは占いや運命をいまだに信じ込んでいる迷信的な自分だ。それを制するように偶然の確率論、心理学的な思い込みや生物学的観点からの欲求へと思考を引っ張っていき前者の可能性を静かに消していく。そうでもしないとバランスを崩してしまう。

 

さて、私はどこへ向かっていたんだっけ。非日常に少し寄り道してしまうとなかなか戻ることができないのも何かと不便だ。そうそう、本屋だ。本屋へ向かっていたんだ。思い出すと早い、イヤホンをしっかり耳にはめ直していまかかっている曲を確認し(Oh Wonderの『Without You』)人の流れ、まさに流れという速さの中に飛び込んでいく。さっきのかつかつした足音は消え、それは私の手の中にある。なんだろう。じっくり見る暇がなかったな、と今更のことのようにおもい、でもとりあえず歩く。

 

やっぱり秋だ。空気だけじゃない。妙な寂しさがある。それはこれがこうだからこうでああでうん、そして結果としてこうなる。と説明できない、秋だけが持ち得る特別ななにか。言葉で説明してはいけない。言い聞かせることは簡単だ。頭は大抵自分の言うことは聞かない。気づけば私の足は本屋への入り口を登っている。急いでいたみたいだ、少し息が上がっている。段差は浅く、段数は多く、簡単に登れているのかどうかわからない。みんなもうひとつの少し狭くて表通り側にある階段を使うからこっちはガランとしている。

 

 

mugiho